ロースクール生の憂鬱

※注:私はロースクール生ではありません。ロースクール行きを考えたこともある、しがない文系院生です。


この週末に発表された二つの新聞記事は、ロースクール生をかなり憂鬱にさせているようだ。
http://www.asahi.com/national/update/1008/009.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20041008i416.htm
まずはロースクールを出て受験する新司法試験の合格率の問題だ。
当初、ロースクールを出た人間のうち、7〜8割が合格するようにするという目標がぶちあげられていた。本来は、単なる法律の受験勉強ではなく、幅広い分野の知識と経験を得た上で、試験を行って質の高い法律家を多数輩出するということだったのだ。
けれど、それはもはや果たせそうもない。朝日新聞の記事に出ているように、合格率は一年目で34%、その後は2〜3割で推移し、各年度ごとの合格者数が5割程度となると、余計な勉強に力を割くなんてとてもではないだろう。新司法試験対策の勉強を続けていた者こそが勝ち組になる。そうなると、幅広い知識などより結局試験テクニックの方を学ぶのではないだろうか?
現行の司法試験制度の合格率は3%未満くらいだからそれに比べれば十分可能性は高いが、ロースクールに2年or3年高い金を払って通い、その結果としてのこの合格率はどうだろう?
そして、ロースクールは通常大学を卒業した後に入学することになるわけだから、卒業すると既習者コースのストレートでも24歳。新司法試験を受けることが出来るのは卒業後の試験からだから、3回受けると27歳になる。結果、30前後のロースクール生が大量に生まれてしまうわけだ。
実際のところ、現行の試験でも合格者の平均年齢は28歳前後らしいので、あまり変わらないという意見もあるかもしれない。だが、ロースクールの学費は高い。司法試験予備校に行かないのだからあまり変わらないという意見もありそうだが、司法試験予備校よりもかなり学費は高いし、多分、試験に受かるためにはロースクール試験対策予備校と新司法試験対策予備校に行くことを余儀なくされると考えられる。そうだとすれば、受験にかかる費用は増大する。
つまり、多額の借金を背負った(もしくは多額の投資をして失敗した)人間が生まれてしまうわけだ。これはかなり厳しいと思う。年間何千人、彼らはどうやって生活していくことになるのだろう。就職もこの年齢では厳しいと思うのだが。


さて、新司法試験に受かった後もお金がかかる。新司法試験に通ればすぐに職に就けるわけではない。1年の司法修習を受けてそしてはじめて仕事に就くようになる。今まではこの司法修習期間の生活費は国費から給付されていたが、今後はこれも貸与になるという話が出ている。とすれば、この費用も借金に追加される。


司法関係者になるためにはお金持ちである必要がある社会になるわけだ。


結果、弁護士は職に就いてからまず借金を返さなくてはならない。ただ同然で人権派弁護士なんかやろうとすると、借金に押しつぶされる。まずは自分の生活。
落ちていたらさらに悲惨で、どうやって生活すればいいんだよ、という状況。


私の友人曰く、新司法試験で失敗した人間が犯罪者になって、合格した人間がそれに対処することで生活を維持するんだってことだが、それはあまりにどうしようもない結末だ。
奨学金が踏み倒され続けたら問題だと思うんだが、その辺の対策はしているのかなぁ。


すごく、最初の趣旨と変わっていると思うんだよ、この制度。
弁護士にとってマイナスというだけではなくて、社会にとってもマイナスなんじゃないかと思う……。