貸与権と公貸権:貸与権と公貸権の違い

上で見たように、附則4条の2を廃止することによって影響を受けるのは、貸本業や、最近増えていると言われるレンタルコミック業だ。
最近では、それに加えて、図書館に対しても課金を行うべきだという議論がある。市民サービスなどのためか、ベストセラー本を数十冊入荷したりするため、売り上げに多くの影響が出ているらしい。ハリーポッターの新刊の場合、ある図書館では40組くらい買ったというところもあるそうだ。
さて、図書館での貸与について対価を得たいと考える場合、38条の4項をなくして権利者が貸与を操作できるようにするか、38条の4項を5項のように改正して一定額を補償金として支払うようにさせるか、あとは、公貸権に関する法律を作るかという話になる。
公貸権というのは聞き慣れない言葉かもしれないが、これはヨーロッパで主に使われている権利で、図書館での利用に関連して、書籍の作成者等がお金の給付を受ける権利といっていいようだ。
この権利は、私も調べて初めて知ったのだが、著作権とは別個の権利として存在しているようだ。
ここからは、以下の資料をもとにまとめてみた。

「公貸権」に関する考察 −各国における制度の比較を中心に
  南 亮一   (現代の図書館 Vol.40 No.4, 2002)

「公貸権」と「貸与権」の双方を見てみると、似ているのは図書館での利用に関連して、書籍の作成者等がお金の給付を受けるという点だけで、他の点をみると全く別の権利と言っていい。
「公貸権」はあくまでも金銭を受領する権利であって、著作権のように独占的排他的な権利を有しているわけではない。つまり、著作者が貸与を禁止させるというようなことはできない。
また課せられる金銭についても、図書館の蔵書数や貸出数などを考慮して決められる。この際、著作者それぞれの作品について平等に扱われるとは必ずしも限らず、単価が蔵書数によって変動する制度も多くある。さらに、受領できる金額に上限・下限が設定されていることが多い。
「公貸権」というものは、文芸の振興という目的から導入されている。そして、著作者に安定した執筆環境を提供するというのがその制度の趣旨とされる。
そのため、「公貸権」の権利は移転が制限されていたり禁止されたりしている。あくまでも著作者を助けるための制度であり、出版社を助ける制度や、財産権とは全く別個の物として存在するのである。
また、料金についてであるが、基本的に国が支払いを行っているようだ。予算規模としては、全体額でイギリスで14億円、スウェーデンで14億3200万円、カナダで7億4300万円といったところらしい。
他にも色々と違いはあるが、独占的排他的な権利を約束する「貸与権」とはかなり異なり、文化振興といったことに考慮した制度であると言えるのではないだろうか。